Linuxで組もう!DIY PC Audio 全過程 Vol.1
ドイツの、Hi-Fiオーデイオ推進HP「24bit96 | USB HiFi and Hi-Res Audio」が、Debianのインストールから Real Time Kernel の実装、そしてMPDを含む設定方法を紹介していますね。
ワケあって余っていた、Intel NUC Core i5(第7世代)/ メモリ16GBでやってみました。
いくつか、個別の環境に合わせたアレンジが必要かと思いますが、ほぼガイダンス通りで、ちゃんとインストールされ、機能します。ええ音です。素晴らしい。
Real Time Kernel、最近はAPTでサクッと入っちゃうんですね。オドロキ。
… しかし、です。
「24bit96 | USB HiFi and Hi-Res Audio」で指定されているDebianのバージョンは “stretch” (いわゆる、ver.9)。
ここからのAPTでインストールされるMPDが、なんとver.0.19なんですよ。
えーっ、それって、Voyage MPDの最終バージョンと同じじゃないですかぁ〜。
せっかく新しいマシンに新規でインストールしたのに、既に化石化しちまったVoyage MPDと同じではちと悲しいですよね。
最新のMPDバージョンはver.0.21まで行っていますし、ver.0.19って、2014年くらいの古いバージョンだし。
せめてver.0.20くらいにはならんかなと思い、最新のDebian ”buster” (ver.10)で、もっかいやってみました。
はい。これもほぼ上記ガイダンス通りでちゃんとインストールされます。
しかも! MPDは0.20を飛ばして、めでたく最新のver.0.21になりました!!
枝番まで記載すると0.21.5。2019年2月のバージョンですね。良しとしましょう。
肝心の音ですが、Intel NUC Core i3(第4世代)/ メモリ8GBに載っけていたVoyage MPDに比べても、無茶苦茶解像度の高い、とてもいい音です。さらば!Voyage MPD。
ということで今回、忘備録も兼ねて、Debian “buster” のインストールから、そのHi-Fi Network Audio Player化までの全過程をご紹介しようと思います。
「24bit96 | USB HiFi and Hi-Res Audio」では、Windows PCの音源を鳴らすためのガイドになっていますが、ここでは、Linux専用機とNASの運用を前提としたインストールガイドに細部変更し、幾つかTips的機能も追加で入れ込みました。
詳細なセットアップ手順は、これから4回に分けて記載します。
その後、LinuxやMPDに初めて接する方のため、やや詳細な説明を展開していくつもりです。
ちなみに、CUIベースのLinux OSによるMPD運用ですが、様々なPC オーディオソリューションが溢れ返る現代においても、以下の複数の理由から、One of the Best、かと思います。
- 「操作性の軽さ」
NASの音源を、そのままLinuxシステムに直接「マウント」させ、MPDを通じて再生させる一気通貫の再生環境は、TwonkyやAsset UPnPなど、別アプリの途中介在を必要としないため、UPnPベースのシステムにありがちな「もたつき」が無く、NASにどんな巨大なデータベースがあろうと、非常に軽快な操作性でコントロールできます。 - 「操作性の秀逸さ」
これは、コントロールアプリの優秀さ、ですね。いわゆる「MPDクライアント」と呼ばれ、手元のタブレットやスマホからMPDをコントロールするアプリに、非常に優秀なものが多いです。
特に最近では、MPoD / MPaDの作者が新たに開発に関わっている「Rigelian」というクライアントが、やっとこさhttpストリーミング再生をカバーするに至り、その軽快性やジャケ写表示方法の多様性、last.fmからの情報リンクなどと合わせ、非常に秀逸なものになってきました。オススメです。 - 「Anytime, Anywhere」
複数のUSB入出力端子を持つPCをコアに据えるので、拡張性が高く、出力がメインオーディオシステムだけに限定されません。ALSA機器として認識されるBluetooth変換用のUSBドングルを使用すれば、アンプやスマホなどの機器を途中で経由させることなく、再生PCから直接Bluetoothヘッドフォンに出力できます。また屋外でも、VPNを経由したhttpストリーミング配信による聴取が可能。スマホの操作だけで、日中から深夜まで1日中いつでも、そしてwifiや4Gが繋がる限り世界中どこでででも、自宅のNAS音源が楽しめます。 - 「PCレス」
一度設定してしまえば、コアの再生マシンであるPCは、完全に「家電製品化」します。再生用PC電源のON・OFFから、アルバムや曲の選択まで、全てスマホ1台で運用可能。オーディオ鑑賞時に、PC画面を開く必要は全くありません。 - 「究極の高音質」
まあ、普通はこれが最初に来ますかねえ。笑。GUIを持たない、音楽再生のためだけに特化したCUIのシステム環境に、Real Time Kernelを実装させることで、CD品質の16bit / 44.1kHzのリニアPCM音源からDSDネイティブ再生まで、どのような音源でも、”Bit accurate”な Hi Fidelityサウンドの再生を可能にします。いい音、ですよー。
ちなみに、当ブログでのセットアップ環境は以下の通り。以下は、この環境をベースに記載します。参考にする際は、適宜、ご自分の環境に置き換えてください。
- Debian用PC: Intel NUC Core i5 NUC7i5BNK メモリ16GB / SSD 250GB
- NAS: QNAP HS-251+ / HDD 10TB / RAID1運用
(以上の2台は、無線LAN子機に接続されたSwitching Hubを介して、有線LAN接続)
- USB DAC: DENONプリメインアンプ PMA-2500NE 内蔵DAC
- SSH作業環境: Mac OS
- MPD操作環境: iOS & Mac OS
なお、今回の「24bit96 | USB HiFi and Hi-Res Audio」様はもちろんですが、「PCで音楽」様と、「みみず工房」様には、Voyage MPDのインストール時以来、大変お世話になってきました。今回のセットアップも、「PCで音楽」様の2011年記事を、相当部分参考にさせていただいています。この場を借りてお礼を申し上げたいと存じます。
asoyaji様、yo様、ありがとうございました。
それでは行きましょう。
Debian “buster” のBitperfect Network Audio化 全過程 Vo.1、まずは準備編です。
Debian “buster (ver. 10)” インストーラーのダウンロードとインストール準備
- 2GB以上のUSBスティックを、Debian “buster”のインストール用とその追加firmware用に2個用意します。
ただ、Debianインストール中に必要になる追加firmwareは、wifi設定用の物だけのようです。Debianマシンを有線でLANに繋げる場合、必要ありません。 - Debian “buster” インストール用isoのダウンロード
https://www.debian.org/releases/buster/debian-installer/index.en.html
ここから、「netinst CD image」のライブラリ内にある「amd64」をクリック、isoファイルを、作業用Mac母艦にDLします。 - Debian “buster”インストール用USBステックの初期化
Mac母艦にUSBスティックを挿し、ディスクユーティリティを立ち上げ、フォーマットで「MS-DOS(FAT)」を選択の後、「削除」をクリックします。 - Debian “buster”インストール用USBスティックのbootメディア化
bootメディア化のためのツールがなければ、Etcherが簡単でオススメです。以下からDLしましょう。
https://www.balena.io/etcher/ (Win / Mac 両用ともあります) - “buster”用 追加firmwareのダウンロード
https://cdimage.debian.org/cdimage/unofficial/non-free/firmware/buster/current/
ここから、リストの一番最後の「firmware.zip」をDLし、解凍します。
解凍した「firmware」フォルダは、firmware用USBメディアにコピーしておいて下さい。
さて、ちと長くなりましたので、初回はここまで。
次回、Debian “buster”のインストールに進みます。
Linuxで組もう!DIY PC Audio 目次
全過程 Vol.1: Debian buster インストール準備編
全過程 Vol.2: Debian buster インストール
詳細解説 Vol.2: Linux / MPD / Real Time Kernelについて
詳細解説 Vol.3: コマンドライン(1) Linux テキストエディタのインストール
詳細解説 Vol.4: コマンドライン(2) 固定IPアドレス設定
詳細解説 Vol.5: コマンドライン(3) リモート作業環境の確立
詳細解説 Vol.6: コマンドライン(4) リアルタイムカーネルの実装と設定
詳細解説 Vol.7: コマンドライン(5) MPD / mpc / ALSA / Avahi Daemon + Safety Shutdown設定
詳細解説 Vol.8: コマンドライン(6) ジャケ写表示設定
詳細解説 Vol.9: コマンドライン(7) MPD詳細設定
詳細解説 Vol.10: コマンドライン(8) NAS上の楽曲データのマウント
詳細解説 Vol.11: コマンドライン(9) おまけ - WoL設定
(21/08/29更新)Debian bullseye & MPD 0.22.6 アップグレード!+ DSD再生情報
初めまして。
返信削除素晴らしい記事を書いていただいてありがとうございます。
この記事を参考にして、まずは試しにラズパイ3BにMPDその他をインストールし、自宅で iPad +Rigelianで音楽再生できました。カバーアート表示もできています。
しかしVPN経由でのHTTPストリーミングができません。
自宅のMPDが入ったラズパイ3BにopenVPNサーバーをインストールし、iPadにopenVPNクライアントをインストールして外出先でiPadでVPN接続をしたのですが、Rigelianを開いても自宅のMPDを認識してくれません。
やり方が間違っているのでしょうか?
ルータのポートフォワーディングなど必要なのでしょうか?
お手数をおかけしますが、ご教示いただければありがたいですm(_ _)m
Unknownさま、
削除ごめんなさい!!
仕事が忙しくて、ブログをケアする時間が全く取れず、こちらのコメント、全く気が付かずにおりました。
でも、本ちゃんのオーディオの方で音出しができて、しかもジャケ写もちゃんと表示されているとのこと、良かったです。
さて、Open VPNですが、まあ、これは曲者、ですよね。
ただ、結論から言うと、筆者の知識では、あまりお役に立てないかもです。
と言うのも、筆者は、QNAPをNASにしてるので、Open VPNは、QNAP経由(正確には、QNAPのOSであるQTS経由)で潜り込んでいるからです。Debianマシンに直接アクセスしている訳ではありません。
最近のQTSは非常に便利で、Open VPNも、QTSなら1発で暗号化設定を落とすことができ、それをそのままiPhoneのOpen VPNアプリに読み込ませれば、VPN接続はいとも簡単に確立されちゃうのです。
なので、DebianマシンにOpen VPN サーバーをインストール、と言う環境となると、筆者には、ちょっとお手上げ状態なのです。
ただ、Open VPNは、暗号化のプロセスが非常に複雑ですよね?繋がるもの同士のお互いの暗号化キーの設定とか。その辺りのプロセスはちゃんと確立されていて、VPNが繋がった状態にはなっているのでしょうか?そうであれば、Rigelianだけではなく、FileBrowserなどのiOSアプリで、VPN接続の状態で、外から家の環境を覗いてみるなど、試してみてはいかがでしょうか。それで、フォルダやファイルが読み込めるなら、Rigelion かMPD、どちらかの設定の問題になりますからね。
また、VPNも、OpenVPNだけではなく、SSTPやL2TPなど、いくつかの種類がありますが、他の方法でも試されましたか?
あと、VPNは家のLAN外の環境で繋ぐ訳ですが、筆者の経験ですと、4G LTEであれば、それこそ世界の裏側からでも繋がりますが(ペルーからでも繋がりました)、WiFi環境だと、繋がらない事もあったりしますね。例えば、その辺の普通のホテルのWiFiなんかは大丈夫ですが、会社のWiFiからは繋がらないです。えてして、WiFi 環境よりも4Gの方が接続は安定しますね。
unknownさんのiPadは、4G契約をされているものですか?もしそうであれば、4G環境で試される事をお勧めします。
何だか、ちゃんとしたお答えができなくて、すいません。
いくつかトライされて、また結果を教えて頂ければ、何かアドバイスできるかもしれません。
もう、相当前ですので、今更この返信をご覧になられるか分かりませんが、宜しくお願い致します。
Asura
Asuraさま
削除返信いただきありがとうございます
こちらにコメントを投稿した後にもいろいろ試しまして、うまくいきました。
iPadを4G回線でVPN接続すると自宅のMPDを認識して再生できました。iPadはSIMが入っていないモデルなので、スマートフォンのテザリングで4G回線に接続しました。
9月16日にコメントを差し上げた時点の環境は4Gでなく外出先のWiFi環境でした。
>例えば、その辺の普通のホテルのWiFiなんかは大丈夫ですが、会社のWiFiからは繋がらないです。えてして、WiFi 環境よりも4Gの方が接続は安定しますね。
WiFiだとつながらない事があるのですね、どうりで納得しました。
iOS以外に、AndroidでもVPN再生を試してみました。
こちらはなぜかWi-Fi環境でも4Gでも問題なく再生できました。うーん不思議です。
>最近のQTSは非常に便利で、Open VPNも、QTSなら1発で暗号化設定を落とすことができ、それをそのままiPhoneのOpen VPNアプリに読み込ませれば、VPN接続はいとも簡単に確立されちゃうのです。
そんなに簡単なんですね。QNAP-NASずっと欲しかったのですが、さらに欲しくなります(笑)
アドバイスありがとうございました。
pianoriさま、
返信削除また、間が空いてしまいましたね。失礼しました。
何にせよ、無事VPN開通、おめでとうございます!
まあ、一部のwifi環境でVPNが繋がらないのは、ファイアウォールの設定かなんかなんでしょうね。
はい、QNAP、良いです。
ただ、普通の2ベイとかだと、ファンの騒音が半端ないので、やはりファンレスを選択しないとオーディオ用には辛いです。ご注意を。
筆者は、本文でも書いたように、Bay Trail世代のSoC向けQuad Core、Celeron J1900搭載のこれを使っていますが、
https://www.qnap.com/en/product/hs-251+
最近、新しい機種が出たようですね。
https://www.qnap.com/en/product/hs-453dx
Gemini Lake世代のCerelon J4105をCPUに搭載しているのと、オンボードメモリが、2GBから8GBに大幅に増強されてます。ま、オーディオ用NASにここまで必要か、という議論はありますが、Amazonとかで見ると、価格的には1万円程度しか違わないようなので、大は小を兼ねる、かもしれません。
HDDやSSDの拡張性から言っても、訳の分からん「超高級オーディオ用静音NAS」を買うより、QNAP製NASが個人的にはオススメです。