Linuxで組もう!DIY PC Audio 詳細解説 Vol.1: PCオーディオのススメ

何故PCオーディオ? 

- Hi-Fiオーディオの「完全家電化」


前回までの「全過程 Vo.1 〜 4」で、ある程度知識と経験のある方向けに、最新Linuxオーディオのインストールを紹介してきましたが、Linuxオーディオに初めて接する方には、特にLinuxの設定などはちんぷんかんぷんだったかと思います。


ここからは「詳細解説」として、ちょっと噛み砕いたカタチで、Linux - MPDオーディオの魅力と最新版の設定方法をご紹介していきましょう。


さて、先ずは大前提。

何故いま、PCオーディオ、なんでしょう?


まあ、昨今の普通の文脈ですと、今流行のハイレゾ音源を含めて、高音質のオーディオが楽しめるから、でしょうか。

無論それはあります。しかしそれは目的の一つに過ぎません。

AppleのAirPlay (旧AirTunes) が何故あれだけ世界中で流行ったのか?


スマホ一つで、気軽に音楽に接することのできる環境を提供してくれたから、ですよね。

しかも、ジャケ写付きで。


このAirPlayの便利さ・快適さをそのままに、AirPlayでの音源再生の制約を取り払ってくれるものが、PCオーディオです。

(ただし、AirPlayストリーミングの、離れた場所への無線LAN経由の複数機器「同時」配信機能は、ちょっと棚上げです。実は、upmpdcliというソリューションがあるにはあるのですが、どーもUPnP、個人的に嫌いなので。再生時差問題も絡みますし。USB DACをLinuxマシンに有線で複数接続すれば、もちろん同時に鳴らせますが、それは、キッチンとリビングと寝室、などといった場合、現実的ではないですよね。あと、有料音楽配信サービスとの統合は、追ってお話しできればと思っています。MPDも、遂に、というか、ver.0.21からTidalとQobozをサポートしました)


CDを聴く、って、結構面倒じゃありませんか?


CD棚まで移動する

棚から目当てのCDを探す

CDプレイヤー前まで移動する

CDケースからCDを取り出す

CDをプレイヤーに挿入する

席まで移動する

(聴き終わったら、またCDケースに戻して、棚に戻す)


手元のリモコンで操作ができるようになるまで、上記のプロセスを踏まなければなりません。


ところが、PCオーディオ、ネットワークオーディオでは、手元のスマホやタブレットの操作だけで、上記のプロセス全てを完結してくれる訳です。席から立ち上がる必要は全くありません。


実際筆者宅には、結構大量のCDがありますが、聴く手間が面倒でほとんど聴いおらず、「かさばって邪魔な」存在として完全に不良債権化していました。


この「不良債権」を、超の付く優良債権にしてくれたシステムが、PCオーディオです。


再生PCに触るのは、スイッチを入れる時だけ。それだって、WoL (Wake-up on LAN) を入れちゃえば、再生PCに手を触れる事さえなくなります。OFFも同様。しかも、出てくる音は、原音再生 Bit Perfectの素晴らしいサウンド。


Hi-Fiオーディオの完全家電化、です。



Linux + MPD 

= ローリスク・ハイリターンなPCオーディオシステム


昨今、様々なPCオーディオのソリューションが登場してますね。

ネットワークオーディオ、というところまで話を広げれば、別にわざわざオーディオ専用のPCを持ち出して組まなくても、手頃な価格のネットワークプレイヤーが売られていますし、Linnに代表されるような高級ネットワークプレイヤーメーカーも存在します。


ただ、どのソリューションも一長一短があり、これが決定打だ!というものは無いような気がしています。

まあ、全てを体験している訳ではないので、エラそうな事は言えないのですが。


ただ、そんな中、24bit96  |  USB HiFi and Hi-Res Audioの記載は、筆者にとって結構「目からウロコ」の内容でした。

Real Time Kernelを実装したLinuxオーディオが、DIYで簡単に組めるんだ!しかも、最新のシステムで!!


これからPCオーディオを始めてみようという方、これを利用しない手はありません。


Linuxというシステムは基本、ソフト部分に対する年会費や購入費用は一切必要ありません。そして今回組むシステムは、リモコン代わりのMPDクライアント以外、一切商業用ソフトウェアを使用していません。全て、全世界で、フリーで流通しているものです。(唯一、筆者オススメのMPDクライアント運用にお金がかかります。確か、年間で¥380、だっけかな?ま、年にノリ弁1個分なら、十分元の取れる金額かと)。


オーディオ専用のハードウェア、という部分がやや壁かもしれませんが、最初の取っ掛かりでは、もう使わなくなって押入れで埃をかぶっているノートPC や、それこそラズパイとかで試しに始めてもOKです。


筆者環境では、Intel core i5のマシンにLinuxをインストールしたので、「全過程 Vol.1」のDebian busterインストール準備編では、「amd64」というイメージをここから落としていますが、Linuxのエライところは、結構どんなマシンにもインストールできるイメージをちゃんと取り揃えていることですね。ちょっと古い32bitのIntel製CPUなら「i386」、ラズパイの1や2なら「armhf」、ラズパイ3以降なら「arm64」、といった具合です。


そう、このシステム、やろうと思えば初期投資にほとんどお金のかからない、非常にローリスク・ハイリターンなPCオーディオソリューションなのです。


気に入らなければ、その時点で別のソリューションに乗り換えればいい訳ですし、気に入れば、新規に専用のNUCやオーディオ用静音PCを新たに奢っても、失敗する危険性はゼロです。もちろん、最初からNUCなどで行っても問題ないかと。


ちなみにこれ、筆者にとっても朗報でした。


第1に、筆者の心情として、Windows や Mac OSのような、要らんもんが沢山くっついて来る「雑音の塊」のような汎用OSではなく(まあ、JPLAYは、その常識を覆したようですが)、CUI(キャラクター ユーザー インターフェイス)という、コマンドラインの記述だけで構築可能な、できる限りシンプルな、Linuxを前提とするシステムを考えていたこと。


そして第2に、システムをインストールするCPUを選ばない、という点も魅力でした。


筆者は、PCオーディオも、部屋のインテリアとして美しく成立するものでなければならないと考えています。

そんな観点から、Intel NUCというbarebone PC(ベアボーン PC: PCの組み立てキットのこと。誰でもカンタンに出来ますよ)が、価格的にも、静音的にも、性能的にも、そしてもちろんデザインにおいても、Best PCではないかと思っており、このハードプラットフォームの使用が、PCオーディオ運用の大前提になっています。

上記は、最新の第8世代、core i5モデル(筆者が実際に使用しているのは、第7世代のcore i5モデルです)。

Celeron仕様にしないのは、性能重視ではなく、薄い方が「かっちょいい」から、です。笑。

いわゆる「オーディオ用静音PC」を選ばなかったのも、同じ理由ですね。この場合、コストパフォーマンス、という観点もありますが。


ただ、PCオーディオのソリューション、特にLinuxベースのソリューションの中には、インストールできるPCプラットフォームを規定するものもあり、NUCでは運用できないなあ、と、諦めていたものも多数ありました。


しかし、素のLinuxからシステムを組んでいくこの完全DIYソリューションであれば、amd64仕様(これ、ややこしいんですが、Intel64仕様と同義語です。2003年にAMD社が最初に作って、Intelがそのまま採用したアーキテクチャなので、この名前になっています)のIntel coreプロセッサーで問題なく動きます。


その他の理由は「全過程 Vol.1」で5つにまとめているので、そちらを参照ください。簡単に言ってしまえば、「Hi-Fiオーディオの完全家電化」の観点から言って、Linux - MPDシステムが一番「軽快で使いやすいのに、無茶苦茶音がいいから」です。


次回は、LinuxとMPD、そしてReal Time Kernelに関してです。


Linuxで組もう!DIY PC Audio  目次

全過程  Vol.1: Debian buster インストール準備編

全過程  Vol.2: Debian buster インストール

全過程  Vol.3: Debian設定 全コマンドライン

全過程  Vol.4: MPDクライアント設定


詳細解説 Vol.1: PCオーディオのススメ

詳細解説 Vol.2: Linux / MPD / Real Time Kernelについて

詳細解説 Vol.3: コマンドライン(1) Linux テキストエディタのインストール

詳細解説 Vol.4: コマンドライン(2) 固定IPアドレス設定

詳細解説 Vol.5: コマンドライン(3) リモート作業環境の確立

詳細解説 Vol.6: コマンドライン(4) リアルタイムカーネルの実装と設定

詳細解説 Vol.7: コマンドライン(5) MPD / mpc / ALSA / Avahi Daemon + Safety Shutdown設定

詳細解説 Vol.8: コマンドライン(6) ジャケ写表示設定

詳細解説 Vol.9: コマンドライン(7) MPD詳細設定

詳細解説 Vol.10: コマンドライン(8) NAS上の楽曲データのマウント

詳細解説 Vol.11: コマンドライン(9) おまけ - WoL設定


(21/08/29更新)Debian bullseye & MPD 0.22.6 アップグレード!+ DSD再生情報

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